あまりに有名で偉大な法隆寺の影にかくれて、ひっそりとたたずむ寺があります。
その名も法起寺
といって、法隆寺から二キロほど離れた県道沿いの畑の中にぽつんとこの寺は建っています。
修学旅行生で混雑する法隆寺の境内とは対照的に、いつ前を通っても、寺の門をくぐる観光客を見かけることはあまりありません。
そんな静かな寺ではありますが、毎年秋になると、早朝から付近のあぜ道にカメラの三脚がずらりと並ぶのです。
ファインダーの向こうには、この寺のシンボルともいえる三重の塔が、コスモス畑の中に朝日を浴びて悠然とたちあがり、その姿に惚れ惚れしてしまうほど。
日本ではじめて登録された世界遺産、
法隆寺地域の仏教建築物
には、法隆寺の伽藍に属する46の建造物以外に、たったひとつだけ、この法起寺の三重の塔が含まれている。